シンポジウムの開催にあたって

 

                       日本学術会議農村計画学研究連絡委員会

                         委員長 佐藤洋平

 

日本学術会議農村計画学研究連絡委員会(以下、農村計画研連)は、日本学術会議第13期の昭和61年に設立され、第19期の今日に至っている。委員会は通常10名の委員で構成され、うち1名が委員長、2名が幹事を務めている。歴代の委員長は、次の通りである。

13期(1986-87                   西口 猛(京都大学、就任時、以下同じ)

141516期(1988-96    北村貞太郎(京都大学)

1718期(1997-2003        冨田正彦(宇都宮大学)

19期(2004-                       佐藤洋平(東京大学)

さて、わが国において農村計画学という学問分野は、明治以来その萌芽を見せていたが、体系化され始めたのは1960年代以降であろう。ただしそれでも当初は、農村空間を対象とする各分野で個別に行われていた。それが糾合されたのが1982年の農村計画学会の設立と言えるが、以来、学際的な研究やプロジェクトが進み、1986年の学術会議における農村計画研連の設置ののちには、農村計画研連と農村計画学会とが中心となり、農村計画分野の研究と普及が進められてきた。

 農村計画研連では、これまで年に数回の会合を持ち、農村計画学に関する討議を進めるとともに、特定の課題については専門委員会を設置し、詳細な議論を行ってきた。その討議を踏まえ、各種のシンポジウムを開催し、会場において報告・討議を行なってきた。

 これまで取り扱ってきたテーマは、農村土地利用計画、集落環境整備、循環型社会の構築、山村の環境管理、都市と農村の共存などである(詳しくは資料参照)。多くのテーマは、土地や施設を対象としたものであったが、そこには、都市に比べて立ち後れていた農村のインフラストラクチャの改善という大きな課題が背景にあった。そのなかで、シンポジウム「農村の子どもをとりまく生活環境」は、日本農村生活研究会、日本家政学及び日本家庭科教育学会との共催であったが、農村に住む「ひと」を直接に扱ったものである。農村計画の重要な要素である「ひと」については、農村計画学会での学術研究発表会やポスター発表会に登場することはあったものの、シンポジウムのテーマとしてはなかなか登場してこなかった。

 このたび、世界のコメ学際研究グループとの共催で、シンポジウム「危機に瀕する世界のコメ」を開催することになったが、この課題には「ひと」の要素が極めて大きい。1994年の大冷害において、わが国の消費者はコメ不足に苦しんだ、にもかかわらず、タイ米を捨てるなどの行為が頻発した背景には、わが国の消費者のコメ生産現場への理解不足、世界のコメ生産現場への思いやり不足が否めない。

今回のシンポジウムでは、コメ離れする人々の行動を、各国のデータから検証するとともに、コメ消費拡大に向けての取り組みが報告される。時間の制約から、コメと文化、(コメに限らず)食育一般、都市と農村との交流、などについては話題提供が予定されてはいないが、総合討論での議論、情報交換会の場を含め、活発な議論を期待したい。

 本シンポジウムが、コメ消費の減退に歯止めをかけるとともに、農村の振興、農村計画学への寄与に少しでも貢献すれば、幸甚である。